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Back log No.5-再生時間 00:03:59

005「時に感情を運ぶための物質は、媒体を変化させながらも本質は変わらないまま、
人の心を動かす、ね」
科学者「はい?」

005「ほら、なんだか巷では流行ってるみたいじゃないか、これ。」
科学者「ああ…また原始的な方法を取ったものですね。
今や思考装置によってこういった売買の形の
プロセスも失われているというのに。」
005「歴史の勉強はしたかい?
「先人」にとってはコレだって技術の賜物さ。
数十年、だったけれど。」
科学者「はあ…」
005「所持欲って言葉、知ってる?」
科学者「単語としては…
ただ最早我々には理解ができませんがね。」
005「硬いなぁうちの科学者は。
実際民にはウケてるんだから、
君だって手にとってみりゃいいんだよ。」
科学者「しかし、これも最終的にはデータでしょう?
聴覚情報のデータなのだから、なにもこのような…」
005「新しいように見えて実は太古の文化なコレだって、
かつてはその「所持欲」によってまた別の形で栄えていたんだよ。
そこが民衆の心に「新しいもの」として
認知されてウケたんじゃないかな。
君はカタいから今は理解出来ないかもしれないけど…
一度手に取ってみなって。」
科学者「はぁ……ふむ…2枚の合成樹脂…
これだけですか。ここからさらに手順を…
失礼ですが、合理的とは言い難いですね。」
005「ほんっと硬いよね君…まあ、ウチの科学者なんてそんなものか。
いつか理解してくれることを願うよ。」
科学者「善処します。」
005「はいはい…でも、これを手にした時に君はなにを思ったかい?」
科学者「何を、と仰いますと…?」
005「珍しいな、とか、珍妙だな、とか…
何でもいいよ。何を思ったか、それだけは知りたいんだ。」
科学者「そうですね…特に強い感情の変化もありませんでしたが…
強いて言うなら「使い方」ですかね。」
005「使い方が知りたい、と言う事かな。」
科学者「そうですね。」

005「成る程ね。という事は君は「疑問」を感じたということになる訳だ。
これについて、初動としてまず興味を持った、という事だ。
我々の国では化学による進展が大きいが、この興味こそが全ての源と言っていい。
大事なのはそこなのさ。全てにおいてね。
民衆だってコレにまず疑問を持ったはずだ。
「形の無いものを形として買う」という事にね。
ただ、中身が認知されて、そしてそれに興味を持ったから買う。
それを所持する感覚を得る為にも、ね。
単純な理由に聞こえるけど、それこそ「失われなかった人間の思考プロセス」さ。」
科学者「…何を仰っているのか、私には理解しかねます。」
005「じきに皆解るさ。今回はこういう形の娯楽として発行されたコレだけど、
全ての物事が化学の思考で進む訳じゃないんだ。
理論的な解がある訳じゃないからね。探ろうとする事が大事なんだ。」
科学者「…理解に努めます。」

005「まあ君らは、今は理解できなかったとしても、
必ず……理解する時が来るよ。」
科学者「…どういう事でしょうか。」

005「………つまりは君ら科学者は合理的な解決方法を
見つけるよう努めてくれれば今はそれでいいって事!
コレ、僕が聴くから。音楽は好きだしね。
じゃ、後の仕事お願いね。」
科学者「??わかりました…」

005「あ、この前君、東の研究棟で書庫に入ったでしょ。
書斎から「また80巻以降の標本書物が入れ替わってる」って苦情があったよ。
という訳でここの床拭きの仕事も追加ね。」
科学者「そ、そんな、お、王!私は…」

-北研究練B3F
室内セキリュティプログロムから
【::#Vと主任科学者の声帯記録】